ブラジルナッツは本当に健康的?――“セレン最強”の裏側で、バリウムとラジウムはどれだけ体に入るのか(最新研究)

ブラジルナッツは本当に健康的?――“セレン最強”の裏側で、バリウムとラジウムはどれだけ体に入るのか(最新研究)

1. ブラジルナッツが「健康に良い」と言われる理由は、まずセレン

ブラジルナッツ(Bertholletia excelsa)はアマゾン地域が主な産地で、脂質(不飽和脂肪酸を含む)やタンパク質、ミネラルを豊富に含む“栄養密度の高い種子”として知られています。とくに有名なのが、必須微量元素の**セレン(Se)**が突出して多いことです。Phys.org+2MDPI+2


セレンは体内で複数の「セレノタンパク質」の材料となり、酸化ストレスの調整、甲状腺ホルモン代謝、免疫などに関わります。栄養補助食品局+1

Phys.orgの記事でも「1粒で推奨量(55〜70µg/日)をカバーし得る」と紹介されています。Phys.org



2. でも「気になる点」もある:バリウムと放射性ラジウム

一方でブラジルナッツには、栄養素だけでなく、**バリウム(Ba)放射性のラジウム(Ra)**などの“望ましくない元素”が含まれ得ることが以前から知られていました。Phys.org+1

なぜそんな元素が入るのか。研究チームは背景として、産地の熱帯土壌がカルシウムに乏しい場合、化学的に似た元素(バリウムやラジウムなど)が植物側で部分的に置き換わる可能性を説明しています。Phys.org+1

問題は「含まれているか」だけではなく、それが消化の過程でどれくらい溶け出し、体に入る可能性があるかです。



3. 新研究のポイント:濃度より大事な“消化で溶ける割合”を測った

今回の研究(ドイツのHZDRとVKTAのチーム)は、ブラジルナッツに含まれる複数元素について、**in vitro(試験管内)で消化を再現し、バイオアクセシビリティ(消化で放出され吸収され得る割合)**を評価しました。Phys.org+1


具体的には、人工の唾液・胃液・消化酵素などを用い、体温条件で段階的に処理して「どれだけ溶け出すか」を測定。元素濃度は質量分析(ICP-MSなど)、放射性同位体はガンマ・アルファ分光、化学形(スペシエーション)評価にNMRやレーザー蛍光法を組み合わせています。Phys.org+1



4. 結果①:セレンは“かなり溶ける”――約85%が消化で放出

最大の結論はここです。

  • セレンは約85%が消化過程で放出(=体に取り込まれ得る)Phys.org+1

  • セレンの主要な形は、吸収されやすいアミノ酸型のセレノメチオニン(SeMet)Phys.org+1


「ブラジルナッツ=セレンが多い」は昔から言われてきましたが、今回の研究はそれを“どれだけ実際に利用可能か”という形で裏付けたと言えます。



5. 結果②:バリウムとラジウムは“ほとんど溶けない”――約2%

次に不安要素だったバリウムとラジウムです。研究では、

  • バリウム(Ba)のバイオアクセシビリティ:約2%Phys.org+1

  • ラジウム(Ra)も約2%Phys.org+1


つまり「含有量がゼロではないとしても、消化で溶けて吸収され得る分が非常に小さい」ことが示されました。

Phys.org側の説明では、**フィチン酸(phytic acid)**のような成分がミネラルや金属を強く結合し、吸収を妨げている可能性が指摘されています。Phys.org



6. “放射線量”はどのくらい?:1日1粒で年2.4µSvという試算

Phys.orgの記事では、「毎日1粒」で推定の追加被ばくが年2.4µSv程度と示され、それはドイツの平均的な自然放射線(年2.1mSv)と比べて約1000分の1という説明がされています。Phys.org+1


ここで単位を整理すると、

  • 1mSv = 1000µSv


なので、年2.1mSvは年2100µSvに相当し、2.4µSvは確かに非常に小さい値です。

さらにBfS(ドイツ連邦放射線防護庁)は、自然放射線が平均年2.1mSv程度であることを示しています。bfs.de
また、ブラジルナッツに含まれる自然放射性核種に関する解説ページも公開しています。bfs.de



7. 結果③:ほかの微量元素(ストロンチウム、ランタン、ユウロピウム)は?

研究では、カルシウムに似た性質を持つストロンチウム(Sr)や、希土類(レアアース)であるランタン(La)、**ユウロピウム(Eu)**も評価しています。


  • ストロンチウム:バイオアクセシビリティは約50%だが、含有量が小さく毒性学的に重要ではないとされるPhys.org+1

  • ランタン/ユウロピウム:検出量はごく微量、バイオアクセシビリティは約25%だが摂取量は基準値を大きく下回るPhys.org+1

要するに「セレン以外は、“溶ける割合がそこそこあっても、そもそもの量が小さい”」という整理になります。



8. 研究の“面白い脇道”:放射性物質の排出剤(キレート剤)への影響も見た

この研究がユニークなのは、食品としての安全性だけでなく、除去(デコーポレーション)剤の効き方にブラジルナッツ由来成分が影響するかも検証した点です。


EDTAやDTPA、さらに新しい候補化合物(3,4,3-LI(1,2-HOPO))などのキレート剤を用い、食物マトリクス(ブラジルナッツ粉)による影響を調べたところ、影響は小さいと報告されています。MDPI+1

一般の食生活とは少し離れますが、「元素が体内でどう結合し、どう動くか」を“化学”として見ているのがこの研究の強みです。



9. ここが大事:セレンは“多いほど良い”ではない(食べ方の目安)

今回の研究は「有害元素のリスクが思ったより小さい可能性」を示しつつも、セレンの摂りすぎという別のリスクを忘れないで、と言っているようにも読めます。


セレンは必要量と上限の幅が狭く、慢性的な過剰摂取はセレノーシス(脱毛、爪の異常、胃腸症状、口臭の変化など)につながり得ます。栄養補助食品局+2栄養補助食品局+2

  • 米国NIH(ODS)の上限量:成人で400µg/日栄養補助食品局+1

  • 研究本文では、EFSAの上限として255µg/日に言及MDPI+1


そして、ブラジルナッツのセレン量は産地やロットで変動します。だから「健康にいいから毎日たくさん」は危険になり得ます。

現実的な目安としては、健康な成人が“習慣として食べる”なら

  • 1日1粒(多くても2粒)を上限にする
    が安全側の考え方です(他のセレン源=サプリやシリアル等を取っている人は特に注意)。栄養補助食品局+1



10. 日本での実践:買い方・食べ方・保存のコツ

ブラジルナッツは脂質が多いので酸化して風味が落ちやすいです。

  • 少量パックを選ぶ(大袋の“食べ過ぎ”リスクも下げる)

  • 直射日光と高温を避ける

  • 開封後は密閉して冷暗所、できれば冷蔵/冷凍へ

  • 料理に使うなら、刻んでヨーグルト、サラダ、グラノーラ、砕いて魚や鶏の衣など「少量を散らす」方向が向きます



まとめ(要点)

  • 新研究は「消化でどれだけ溶けるか」を体系的に評価し、セレンは約85%が利用可能と示したPhys.org+1

  • 懸念されるバリウム/ラジウムは約2%しか溶けず、推定被ばくも小さいとされたPhys.org+1

  • ただしセレンは過剰摂取のリスクがあるので、**毎日なら1粒(多くても2粒)**が現実的栄養補助食品局+1


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参考記事

ブラジルナッツはどれほど健康的か?新しい研究が種子中の微量元素を解明
出典: https://phys.org/news/2025-12-healthy-brazil-nuts-elucidates-elements.html