植物肉ブーム後の本番 - ビヨンドバーガーが欧州で問われる「価格」と「日常性」

植物肉ブーム後の本番 - ビヨンドバーガーが欧州で問われる「価格」と「日常性」

ad-hoc-newsの元記事が投げかけている本質的な問いはシンプルだ。Beyond Burgerは、植物肉市場全体の熱狂が冷えたあとでも、ドイツ・オーストリア・スイスを含む欧州市場で存在感を保てるのか。かつて“未来の定番”のように語られた商品はいま、流通棚の中で、価格と再購入率というはるかに現実的な勝負に入っている。元記事も、消費者にとって重要なのは理念だけではなく、「店頭でどれだけ見かけ、いくらで買え、続けて選べるか」だと示している。

まず確認しておきたいのは、Beyond Meatの事業環境がなお厳しいことだ。同社の2025年通期売上高は2億7549.6万ドルで前年から15.6%減少し、国際部門売上高も12.5%減となった。国際小売は11.1%減で、会社自身がその背景としてEUにおけるバーガー、ひき肉、ソーセージの販売減を挙げている。さらに2025年第4四半期だけを見ると、国際小売売上高は32.5%減まで落ち込み、EUでのバーガー販売減が響いた。つまり、欧州は成長期待のある地域である一方、足元ではすでに厳しい選別が始まっている。

それでも欧州が重要なのは、この地域の需要がゼロになったわけではないからだ。Beyond Meatは2021年時点で英国、ドイツ、オーストリアなど数千規模の小売店への拡大を打ち出しており、欧州を長く重点地域として扱ってきた。2026年には社名・ブランド表現を「Beyond The Plant Protein Company」へと寄せ、植物肉専業の印象を薄めながら事業の再定義を進めている。これは守りの姿勢にも見えるが、見方を変えれば、バーガー単体の話題性ではなく、より広い植物性タンパク需要の中で生き残るための再配置でもある。

欧州の現状をもう少し丁寧に見ると、単純な「植物性食品の失速」では説明しきれない。GFI Europeによれば、ドイツでは2024年に37%の世帯が植物性ミルクを、32%の世帯が植物性肉を少なくとも一度購入している。一方で、ドイツの植物性食品市場ではPB(スーパーの自社ブランド)が数量ベースで13.9%伸びたのに対し、ブランド商品は横ばいだった。つまり、需要そのものが消えたというより、「高いブランド品」から「手頃な代替品」へと重心が移ったと読むべきだ。Beyond Burgerが欧州で再び伸びる条件は、棚に並ぶことではなく、PBと比べても手に取りやすい理由を作れるかどうかにある。

実際、欧州での追い風はある。GFI Europeは、ドイツでは47%の成人がすでに肉の摂取削減、あるいは肉を食べない食生活に取り組んでいると報告している。また2025年には英国で、価格競争力の改善やLidlのような手頃な小売での品揃え拡大を背景に、チルド植物肉の販売が回復傾向を見せたという。Beyondにとって重要なのは、植物性であること自体を売りにするより、「高タンパクで、調理しやすく、味が安定し、しかも高すぎない」日常食品として位置づけ直すことだろう。

商品そのものにも、守りではなく改善の跡はある。Beyond Burgerの現行世代は1食あたり21gのたんぱく質、飽和脂肪2g、コレステロール0mgを打ち出し、アボカド油や豆類由来タンパクを前面に出している。さらに2026年3月には20超の商品がClean Label Project認証を取得したと公表し、同社は「クリーン」「シンプル」「透明性」という軸を強めている。健康や加工度への不安が広がるなかで、これは価格以外の説得材料を増やそうとする動きだ。

では、SNSではBeyond Burgerはどう見られているのか。公開投稿を追うと、まず目立つのは「味と再現度」を高く評価する層だ。Reddit上では、他のヴィーガンバーガーより少し高くても品質差で納得できる、植物肉の中ではかなりおいしい、という声が複数見られる。単なる“代用品”ではなく、グリルした時の肉らしさや食感の完成度を評価する人は今も少なくない。Beyond Burgerがまだブランドとして生きているのは、この「うまさで指名買いする層」が完全には消えていないからだ。

ただし、支持の声以上に強いのが「価格が壁」という反応だ。公開投稿では、高すぎて毎週は買えない、もっと安い植物肉でも十分おいしい、欧州では安価な競合が棚を広げている、といった指摘が繰り返されている。実際、欧州在住ユーザーの投稿には、Beyondはまだ売られているが競合に棚を奪われつつある、フランスではHeuraやHappyVoreのような他ブランドが広がっている、という現場感覚が出ている。これは企業の決算で示されたEUでの販売減ともきれいにつながる。SNSの本音は、Beyondが嫌われたというより、「高いプレミアムを払い続ける理由が弱くなった」ということだ。

 

もう一つの論点は健康イメージだ。SNSでは、牛肉よりは良いという声がある一方、飽和脂肪や加工度を気にして毎日は食べたくないという反応も目立つ。さらに、BYND公式のAMA投稿には、肉らしさを強調しすぎる名前やロゴを見直すべき、包装をもっと環境配慮型にすべき、健康面をもっと前面に出すべきだという助言が寄せられていた。2026年の「Beyond」への寄せ方は、こうした反応に対する一種の回答と見ることもできる。つまり同社は、もはや“肉そっくり”だけでは十分でないと理解し始めている。

欧州での今後を考えるうえで見逃せないのは、制度面の空気も少し変わっていることだ。Beyond Meatの年次報告書によれば、EU司法裁判所は2024年に、植物性食品に対するフランスの「肉」名称禁止措置をEU法に反すると判断し、その後2025年1月に関連政令は無効化された。表示ルールをめぐる不確実性が完全になくなったわけではないが、少なくとも植物性商品の分かりやすいネーミングが全面的に閉ざされる流れではなくなった点は、欧州市場にとってプラスだ。

結局のところ、Beyond Burgerの欧州戦略は「拡大するか、縮小するか」という二択ではない。より正確には、「高価格の象徴ブランドのまま残るのか」「PBや地域ブランドと競り合える日常食品へ降りていけるのか」という選択だ。市場全体が伸び悩んでいても、肉を減らしたい人、高タンパク食品を探す人、環境負荷の低い食生活を試したい人は欧州に確かに存在する。Beyond Burgerが再浮上できるとすれば、それは革命の旗手としてではなく、普通の買い物かごに戻ってきた時だろう。SNSの反応も、決算の数字も、いまはその現実を同じ方向から指している。


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