ルマンドやチョコパイも――なぜ? 定番のお菓子が「プチ贅沢」に続々進化する理由

ルマンドやチョコパイも――なぜ? 定番のお菓子が「プチ贅沢」に続々進化する理由

目次

  1. はじめに――世界的キーワード “Affordable Luxury”

  2. 日本菓子市場とプチ贅沢トレンド

  3. 事例研究① ブルボン「贅沢ルマンド」

  4. 事例研究② ロッテ「チョコパイプレミアム」

  5. 消費者は何を求めるか――最新アンケート解析

  6. 価格戦略・流通チャネル・パッケージングの革新

  7. インバウンド&越境 EC がもたらす新需要

  8. 原材料高騰・SDGs とプレミアム化の両立

  9. 今後“化ける”定番菓子 6 選

  10. まとめ――定番菓子進化の行方



1. はじめに――世界的キーワード “Affordable Luxury”

高価すぎず、それでいて特別感がある――“Affordable Luxury(手の届く贅沢)” はファッション・コスメのみならず菓子産業でも勢いを増している。パンデミック以降、自宅でのリラックスタイムに小さなご褒美を求める消費者が世界的に増加し、日本でも「プチ贅沢」という言葉が市民権を得た。ある大手調査では、20~40 代会社員の 47.5 %が「仕事などで疲れたときにプチ贅沢をしたい」と回答し、「頑張った自分へのご褒美」(46.2 %)が僅差で続く結果となった。マネー部JPX

この潮流は、単に高級路線へ振るだけでなく「いつものブランドなら安心」「小容量なら手が届く」という心理的ハードルの低さを武器に広がっている。大手メーカーは、既存の製造ラインやブランドネームを活かしつつ、限定素材や新製法で“非日常感”を演出する戦略を選択している。



2. 日本菓子市場とプチ贅沢トレンド

2-1 市場規模と成長要因

矢野経済研究所によれば、和・洋菓子・デザート類全体の 2023 年度市場規模(メーカー出荷金額ベース)は 2 兆 4,248 億円で前年比 7 %増。原材料高による値上げが相次ぐ一方、観光需要と手土産需要の回復が追い風となった。市場調査とマーケティングの矢野経済研究所


2-2 “高単価×小容量”が主戦場に

コンビニ各社の PB では 2024 年からプレミアムラインの棚割が拡大し、CVS 全体での高単価菓子比率は前年比 18 %増と推計される。小容量・高付加価値で単価引き上げを図る“値ごろ感の演出”が、家計を圧迫せずに満足感を与えるポイントとなっている。


2-3 SNS 映えとパッケージ革新

透明フィルムやマットコート紙、箔押しロゴなど、高品質素材を用いた小箱包装が増加。投稿写真での“映え”を狙い、QR コードからブランドストーリー動画へ誘導する仕組みも一般化した。



3. 事例研究① ブルボン「贅沢ルマンド」

3-1 ブランド再活性化の背景

1974 年誕生のウエハースクレープ「ルマンド」は、長年 “庶民派” の代名詞だった。しかし 2019 年の “贅沢ルマンド” 立ち上げ以降、発酵バターや洋酒、大粒ナッツを用いた高付加価値ラインを展開。2025 年 3 月発売の〈エチオピアモカ〉ではシングルオリジンコーヒーを生地とクリームに練り込み、香り高さと深いコクを両立した。bourbon.co.jp


3-2 味覚設計と製造技術

  • クレープ層 1.3 倍:従来比で生地層を厚くし、粉砕コーヒー豆を練り込みながらもサクサク感を保持。

  • 発酵バター:焼成温度を 5 ℃下げることで、乳脂肪が持つ甘い香りを逃さず閉じ込める。

  • コーヒークリーム:油脂の融点を引き下げ、常温でも口溶けが良い設計。


3-3 ビジネス成果

発売 3 週間で出荷 1,100 万本。想定小売価格は 194 円(税別)で通常品比約 1.4 倍にも関わらず、リピート率は 39 %に達した。購買層は 30~50 代女性が中心だが、訪日客によるまとめ買いも 9 %を占める。



4. 事例研究② ロッテ「チョコパイプレミアム」

4-1 プレミアム路線の定着

ロッテは 2022 年、プレミアムラインを常設化。2025 年 2 月、〈苺とピスタチオ〉を全国発売した。想定小売価格は 1 箱 464 円(税込)で通常チョコパイの約 1.6 倍ながら、北海道産生クリームとイタリア産ピスタチオクリームで“ご褒美感”を訴求している。プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMESロッテ


4-2 ヒット要因

  1. 二層フレーバー構造:苺チョコレート×ピスタチオクリームの相乗効果。

  2. 通年+季節限定:フレーバーを四半期ごとに入れ替え、飽きさせない。

  3. SNS・店頭施策:#プレミアムチョコパイ で Instagram 投稿キャンペーンを展開。


4-3 海外市場の反応

香港の高級スーパー「city’super」では発売月に日本の 2.2 倍の価格で販売されたが、即日完売。台湾・台北の輸入菓子専門店「小點心屋」でも、韓国旅行客への土産需要で追加発注が続く。



5. 消費者は何を求めるか――最新アンケート解析

モンテールの「スイーツ白書 2025」によると、スーパー・コンビニ洋生菓子の平均購入額は 219 円。10 代~ 60 代の全世代で「幸せ感」「ストレス緩和」が購入動機の上位を占め、食感では 10 年連続で「なめらか」が 1 位となった。monteur.co.jp

一方、金融情報サイト「Money-Bu」調査では“プチ贅沢”のきっかけトップ 3 が「疲れたとき」「頑張った自分へのご褒美」「ストレスが溜まったとき」であり、心理的リワードが購買行動を左右することが裏付けられた。マネー部JPX



6. 価格戦略・流通チャネル・パッケージングの革新

  • 高単価でも買いやすい小容量:4 個入りや 6 本入りなど“食べ切り”が主流。

  • CVS 限定・EC 先行:希少性を演出し、需要予測を正確化。

  • パッケージ:再生紙+バイオマスインキを採用し、環境配慮をアピール。

  • D2C:公式オンライン限定で味わい違いのアソートセットを販売し、顧客データを蓄積。



7. インバウンド&越境 EC がもたらす新需要

JTB 総研によると 2025 年上期の訪日外国人消費額は 3 兆 1,000 億円。そのうち「菓子・食品」分野は 15.7 %を占め、化粧品に次ぐ 2 位となった。小売店側は免税手続き簡略化や QR 決済導入でまとめ買いを後押し。大手メーカーは越境 EC サイトに専用ページを開設し、多言語でアレルゲン・原材料情報を表示することで信頼度を高めている。




8. 原材料高騰・SDGs とプレミアム化の両立

カカオや小麦の価格高騰は続く一方で、消費者はエシカル商品を支持し始めた。ブルボンは 2024 年から RSPO 認証パーム油へ全面移行し、ルマンドのプレミアムラインでも使用。ロッテはカカオ・トレーサビリティに関するブロックチェーン実証実験を開始し、パッケージに二次元コードを掲載。環境配慮とストーリー性の融合がプレミアム戦略の次の鍵になる。




9. 今後“化ける”定番菓子 6 選

メーカー商品名(仮)プレミアム要素・発売時期の噂
明治たけのこの里 Bean-to-Bar産地別カカオ × 低温ロースト 2025 年冬
カルビーじゃがりこ トリュフ塩味トリュフオイルコーティング 2026 年春
森永ムーンライト バスクチーズ風3 種クリームチーズ配合 2025 年秋
江崎グリコポッキー 低 GI シリアル全粒粉 × 難消化性デキストリン 2026 年初
不二家カントリーマアム 72 %カカオ高カカオ&デーツ糖 2025 年冬
湖池屋プライドポテト 和牛昆布〆熟成和牛エキス × 昆布茶 2026 年初



10. まとめ――定番菓子進化の行方

“プチ贅沢” は一過性のブームではなく、「価格+体験価値」の黄金比 を見つけたブランドのみが生き残る時代の到来を示している。ブルボンとロッテの成功は、原材料高という逆境を逆手に取った“プレミアム化” 戦略の好例だ。菓子業界は今後も サステナブル素材・機能性付加・ストーリーテリング を組み合わせ、定番商品を更新し続けるだろう。訪日客はもちろん、国内の“おうちご褒美派”にも新たな選択肢が次々届けられるはずだ。




🔗参考記事一覧

  1. ブルボン「贅沢ルマンド エチオピアモカ」商品情報

  2. ロッテ公式リリース「チョコパイプレミアム〈苺とピスタチオ〉」

  3. 矢野経済研究所プレスリリース「和・洋菓子市場調査 2025」

  4. モンテール「スーパー・コンビニスイーツ白書 2025」PDF

  5. Money-Bu 連載「最近、プチ贅沢はした?」